誰もがおそらくやったことであるであろう、ストレッチ。体を伸ばすこと……と、みんな理解はしているだろうが、実はもっと奥が深いもの。この連載企画では、そんなストレッチのエキスパートである長畑芳仁先生に、ストレッチの奥深さを話してもらう。今回は、静的ストレッチについて。
A.15秒から20秒を目安にやればいいと思います。
静的ストレッチの適度な長さは15秒から20秒と考えてください。そのくらいの時間で十分です。それを2、もしくは3セット。場合によっては1セットでもいいと思います。ただし、昨日筋トレをやった部位がすごく張っている場合などは、もう少し時間をかけてやっていいでしょう。
この「15秒から20秒」という時間設定に明確な根拠はありません。静的ストレッチの研究で、30秒と1分とでは効果に差がなかったという結果が出ています。30秒という時間がパフォーマンスを落とす臨界点に近いとすれば、20秒くらいがちょうどいいだろうと考えられます。
筋肉痛がある個所もストレッチをすべきか。その問いの回答になりうる確定的なエビデンスは、現時点ではまだありません。ただ、筋肉痛がきているということは、筋肉がダメージを受けていることは間違いありません。
筋肉痛が残っている個所を伸ばしたいか、伸ばしたくないか。そこは自分の感覚にしたがっていいと思います。いつもよりも動的ストレッチを多めに入れるなどの工夫も有効かもしれません。日々の筋トレで毎回毎回、ベストパフォーマンスを目指す必要はありません。難しく考えず、自分がやりたいようにストレッチすればいいのです。
競技会の前や測定会の前などは、静的ストレッチをやりすぎないほうがいいです。ですが、競技会の前日に筋肉がパンパンになるようなことはやらないはず。時間をかけて伸ばさないと筋肉の張りが取れないような状態で当日を迎えることはないはずです。
では、ストレッチする際に、どこまで筋肉を伸ばすべきか。格闘技やバレー、新体操など最大限の可動域を発揮しなくてはいけない競技の選手たちは別にして、一般の人であれば「イタ気持ちいい」と感じるポイントを一つの目安と考えてください。
筋肉が伸びて痛いものの、気持ちがいい。この「気持ちいい」と脳が感じることが重要なのです。痛いだけではストレッチにおいて大切なリラックスすることができません。近年、ストレッチのお店が増えてきたのは「気持ちいい」からです。
※本記事は、2017年に公開した記事を再構成したものとなります
長畑芳仁(ながはた・よしひと)
1960年、大阪府出身。 特定非営利活動法人日本ストレッチング協会理事長。日本体育協会認定アスレティックトレーナー。 帝京大学講師。早稲田大学教育学部卒業、順天堂大学大学院体力学専攻修了。 2001年「すとれっち塾戸田公園店」開設。専門分野はアスレティックトレーニング、スポーツ科学、アスレティックリハビリテーション。リコーラグビー部など、多数の社会人・大学チームのストレングスコーチ、および日本代表ボートチームのフィジカルサポートなどを務める。「ストレッチまるわかり大事典」(ベースボール・マガジン社)「アクティブBODYストレッチ」(日東書院)など著書多数。
日本ストレッチング協会HP