【渡辺華奈のデートするならジムがいい 第15回】ベラトールで闘ってきます




アメリカの格闘技団体「ベラトール」での初試合が4月2日(日本時間3日)に行なわれます(対アレハンドラ・ララ選手)。自分にとっては1年3ヶ月ぶりの試合で、純粋に試合をできることが嬉しいし、楽しみたいという気持ちです。28日(日)に出発予定なので、この原稿が出る頃にはもう現地に入っています。日本でガッチリ追い込んでいって、向こうに着いてからはリラックスして試合を迎えたいと思っています。

 

自分の場合、あまり何かにモチベーションを左右されることはなく、昨年はコロナの影響で試合がなくても淡々と練習を重ねてきました。試合があってもなくても、基本的にはやることは変わりません。試合が決まってからの変化といえば、減量があることと、対戦相手の試合映像を見ることくらいです。

 

対戦相手の試合映像を見るときは、単純にどっちの構えなのか、寝技が得意なのか、立ち技が得意なのかという、基本的なところをまずは確認します。それから何をやってくるのかという部分です。たとえばテイクダウンにしても、足にタックルをするのか、胴にタックルをするのかなど、ざっくりと相手の闘い方をイメージするようにしています。

 

試合用のオープン・フィンガー・グローブは団体によって違います。ベラトールのグローブは2019年の試合で一度使用していて、初めてではないのでまったく問題ありません。ほとんどの選手はバンテージをしてグローブを着用していますが、実は自分は今まで一度もバンテージを巻いたことはありません。バンテージをするとパンチ力が増すとか、拳が硬くなるといった利点があるそうですが、自分はそれよりも手の動かしやすさ、つかみやすさを重視したいと思っているので、今までつけてきませんでした。将来的にはバンテージをつけることもあるかもしれませんが、今までやってこなかったこと急にやるのも怖いので今回は今までと同じように試合をするつもりです。

格闘技に転向したときから海外で試合をしたいと思っていたので、今はやっとスタートラインに立てるという気持ちです。「プレッシャーはないですか?」とよく聞かれるのですが、プレッシャーは全然ないんです。ネガティブな意味ではなくて、負けたら負けたでしょうがないですから。今の実力がそこまでだったと知ることができて、そこからまた頑張ればいいという感じです。

 

結果的に今までは無敗できていますが、そこへのプレッシャーもなくて、「負けたらどうしよう」と不安になることはありません。試合である以上、勝ち負けは当然ありますけど、結果以上に自分がやってきたことを出したいというのが一番です。もちろん、自分の実力を出し切れば勝てるという自信もあるので、試合が近づいても落ち着いていられるんだと思います。

 

だから緊張や不安よりも楽しみのほうが大きい。相手は強い選手なので、もしかしたら跳ね返されて負けることもあるかもしません。それも含めて、自分のMMAがどれくらい通用するのか、すごく楽しみです。柔道では外国の選手ともたくさん試合をしてきましたが、MMAではまだ数えるくらいしか外国の選手とは闘っていないので、そういった部分も純粋に楽しみです。

 

この連載の最初でも書かせてもらいましたが、自分はアスリートとして一度は終わった人間です。それなのに今はこうして、挑戦できる環境があるということだけでもすごく幸せなことです。アスリートとして勝負の舞台に立てることを純粋に楽しみたい。一度終わった自分にとって、今はすべてボーナスステージなので、思いきりやるだけです。

 

年齢的にはもうこの先、違うジャンルでトップを目指すことはないと思うので、世界で勝負できるのはこれがラストチャンス。MMAでいけるところまでいきたいです。そのスタートとなる試合を精いっぱい闘ってきます。

 

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渡辺華奈(わたなべ・かな)
1988年8月21日、東京都出身。7歳から柔道を始め、高校ではインターハイ2位、アジアジュニア優勝などの実績を残し、東海大進学後、1年時に全日本ジュニア優勝を飾る。卒業後、JR東日本へ入社し、オリンピックを目指して競技を続けた。2017年に同社を退社し、格闘家に転身。同年12月3日にデビューを勝利で飾ると29日にはRIZIN初参戦で実力者杉山しずかに勝利。MMAデビューから無敗の快進撃を続けている。所属はFIGHTER’S FLOW