食前、食後、薬を飲むタイミングが違うのはなぜ? 【ドクター長谷のカンタン薬学】




風邪をひく、頭痛、筋肉痛、二日酔い……日常生活では何かと薬のお世話になる機会も多いもの。薬はドラッグストアやコンビニでも簡単に手に入る時代。だからこそ、使い方を間違えると大変!  この連載では大手製薬会社でさまざまな医薬品開発、育薬などに従事してきた薬学博士の長谷昌知さんにわかりやすく、素朴な疑問を解決してもらいます。
※本記事は、2019年に『VITUP!』で公開した記事を再編集して紹介するものとなります。

Q.食前、食間、食後と薬によって飲むタイミングが違うのはなぜでしょうか?

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病院で処方される薬でも、ドラッグストアなどで購入する薬でも、服用するタイミングは必ず明記されています。食前、食間、食後……と薬によって飲む時間が違うのは、どういう時に飲むかによって、薬の効果が違ってくる可能性があるからです。「いつ飲むか?」は、薬の吸収や効果、副作用にもかかわってきます。

薬の多くは、胃で溶けて小腸で吸収されますが、空腹の時に薬を飲むと、薬は胃から小腸へと速やかに移行します。逆に胃の中に食べ物がある状態(食後)では、薬が小腸まで届くのに時間がかかります。薬によっては、早く腸に届けたいから空腹時に飲むべきものもあれば、ゆっくり届けたいから食後に飲むものもあるのです。

食前に飲む薬は、食事の30~60分前に服用することで効果を発揮します。また、食間とは最後の食事から2時間ほど後の空腹時を指し、食事の最中という意味ではなく、食事と食事の間という意味です。食後はだいたい30分以内で、胃の中に食べ物が残っている状態を指します。

空腹時に飲むと薬の作用で胃の粘膜を荒らすなど、胃腸の不調を招いてしまう薬は、食後に飲むように設定されています。食前、食間、食後と、薬を飲むタイミングが食事とセットになっているのは、飲み忘れを防ぐというのが一つの狙いです。薬は忘れずに飲んでほしいので、食事の前後などわかりやすいタイミングで、そもそも治験をしているのです。

◆飲み足しや違う薬の服用は危険