自炊なしでもOK。「バランスの取れた食事」の実践法【管理栄養士が解説】




毎日当たり前のように摂っている食事は栄養的に適切なのか? 誰もが一度は疑問に思ったことがあるかもしれません。それでも、その問題に正面から向き合うことなく、日々を過ごしてしまいがちです。そこで前回まではアラサー男子・森本とガリガリ男子・ハヤシが、プロの管理栄養士・大野尚子さんに食事の評価とアドバイスをいただいてきました。

とはいえ、編集部員の事例は少々限定的。そこで今回はより多くの人々に向けた食事のポイントをお伝えすべく、大野さんにバランスの取れた食事について根本的なお話を聞きました。

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ポイントは「主食」「主菜」「副菜」の考え方

――バランスの取れた食生活のために、ベースになる考え方はどのようなものでしょうか。

「まずは『自分がどのぐらい食べなければいけないのか』を知ることが大事だと思います。エネルギー量ひとつ取っても、デスクワーク中心の仕事をしている人と、外回りが多い人を比べると必要な食事量がかなり違います。もちろんスポーツ実施の有無や性別、年齢でも差は出ます。そういった基準値を『日本人の食事摂取基準』から学んで、自分に適した食事の摂り方を知ることが大切です」

――必要なエネルギー量の目安はどうやって知ることができますか。

「食事を管理するアプリもたくさん出ていますし、日本医師会のWebページで計算することもできます。年齢、性別、体重、運動強度などを入力すると個人に合わせた目標値が出てくるので、そこで自分の基準値を知ることができますよ。他にも農林水産省が出している『食事バランスガイド』など指標となるものはたくさんあります」

――適切なエネルギー量を摂取した上で、ビタミン・ミネラル・食物繊維などの栄養素でバランスを整える形でしょうか。

「はい。エネルギー源である炭水化物や脂質を体で動かすためには、ビタミンやミネラル・食物繊維も必要になってきます。これらが不足すると、せっかく炭水化物を摂っても体が正常に機能せず、あまり食べていないのに太ってしまう、血糖値が高くなるなどの悪影響が出てきます」

――バランスの取れた食事のためには、細かな計算が必要になりますか。

「たしかに栄養素の計算ができれば確実ですが、それはかなりハードルが高いと思います。そのため、まずは『主食・主菜・副菜』の要素を意識していただきたいと思います。この意識を持つだけで、栄養バランスがかなり改善されます」

――ぜひ詳しく教えてください。

「主食はエネルギー源となるご飯やパン、主菜はタンパク源である肉・魚・卵・大豆製品、副菜は体の調子を整える野菜やきのこ、海藻類などです。まずは大きく分けて、この3つのくくりを意識することが大切です」

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――細かな栄養計算は必須ではないと。

「はい。『主食・主菜・副菜』という考え方を実践できれば、結果的に栄養バランスは改善していきます。たとえば、ひとり暮らしの方に多いのが、お米やパン、麺類などの主食ばかり食べてしまうケースです。そこで『主菜と副菜がないな』と立ち止まれば、おにぎり・サラダ・お肉などに食事を組み替える発想が生まれますよね。定食御膳のような食事でなくても、栄養バランスの改善は可能なのです」

――絵に描いたような一汁三菜の食事でなくても、食事を改善することはできるのですね。

「その通りです。バランスの取れた食事と言うと、定食のような献立を想像してハードルが高いと感じる方も多いです。ただ、定食屋の食事を理想と考えて、それをレベルダウンしていけばいいのです。それがたとえコンビニ食でも問題ありません」

――主食と主菜は自然と献立に加わると思いますが、副菜が不足するケースが多いように感じます。

「そうですね。副菜は不足しがちな品目だと思います。サラダはコンビニなどで買うと比較的高価ですし、つい置き去りにしがちでしょう。ただ、ハードルを下げれば十分取り入れることは可能です」

――自炊をしなくても手軽に買える副菜等があれば教えてください。

「コンビニなら野菜スティックやパックの千切りキャベツやミニトマトがおすすめです。このような手軽に摂れる食材を活用して、たとえ完璧でなくても副菜を食事に組み込むことが大切です。正しい意識で食事を摂っていけば、栄養バランスが適正ゾーンに入った食生活が見えてきます。また、乳製品のヨーグルト類や果物の100%ジュースなどもビタミン・ミネラルを補うプラスワンの食材として活用してほしいですね」

――コンビニで買える食材であればハードルは低いですね。ちなみに、どうしても厳しい時はサプリメントの摂取も有効でしょうか。

「そうですね。ただ、サプリはあくまで補助と考えてください。先述したように、エネルギーとビタミン類は両方あって機能するものです。エネルギー不足の状態でいくらサプリメントを摂っても、根本となるエネルギーが足りなければ元気にはなりません。しっかりエネルギーを摂ったうえで、不足しがちな栄養素を補うといいですね。あくまで体をつくるのは食事です。それを忘れずに、食生活の改善に取り組んでいきましょう」


本企画を通して、食生活への具体的なアドバイスをいただいただけでなく、バランスの取れた食事の根本論まで伺うことができました。本企画が読者のみなさまにとって食事改善の参考になりましたら幸いです。大野さん、ご指導ありがとうございました。



大野尚子(おおの・しょうこ)
食生活の相談室 食STEP代表、管理栄養士。短大卒業後、栄養士として給食会社・食品会社勤務を経て管理栄養士の免許を取得。(独)国立健康・栄養研究所にて、国民健康・栄養調査業務に携わり、全国各地での研究における食事調査を担当する。その後、特定保健指導、国立スポーツ科学センターでのトップアスリートの栄養サポートを担当。独立後はジュニアアスリートを中心としたスポーツ栄養相談・個別サポートNPO法人における生活困窮世帯に対する食育事業、高齢者介護予防事業、コラム執筆、講演活動などに注力している。

取材・文/森本雄大