女子フィットネスの歴史を変える世界V。大谷美咲が振り返る2023年、フェア競技の先に見据えるものとは




女子ボディメイク競技においてビキニフィットネスが注目を集めがちであるが、より筋量の求められるボディフィットネスも人気カテゴリーになりつつある。その中で同部門のアイコン的存在なのが大谷美咲選手だ。2023年はIFBB世界選手権(ボディフィットネスは11月3日開催)で頂点に立ち、同大会での女子競技において史上初の日本人女性優勝者となった。ここでは、そんな大谷選手に2023年の振り返りや業界全体について、今年の目標について聞いた。

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理想の肉体を追求する面でやることは変わらない

――2023年を振り返って、一番印象に残った出来事は何でしたか。

「やっぱりIFBB世界選手権ですかね。世界で優勝することができたのは、自分にとってすごく大きなものでした」

――世界の舞台で、日本人女性として一般部で初めて金メダルを獲得する快挙でした。そこを達成できたことがやはり大きかったでしょうか。

「日本人女性初というところは、それほど意識しなかったかもしれません。どちらかというと、自分が想像する理想のボディフィットネス像に近づけたことですね。理想を描いてつくってきた体を評価してもらえて『間違いではなかった』というのを実感できたのがうれしかったです」

——大谷選手が追求されるボディフィットネス像というものは、具体的にはどのようなイメージなのでしょうか。

「一番あこがれるのはミスター・オリンピアのトップの選手です。一番美しいボディフィットネスのラインというのはここかなと思います」

――世界での戦いにおいて、日本人は骨格の優位性的に厳しい部分があるのが事実です。その中で優勝された大谷選手が、手応えを感じた部分はどのあたりでしたか。

「自分を一番良く見せられるような、Vシェイプが際立つ体づくりができたことだと思います。あとは、それを際立たせるポージングを本番で披露できたことに手ごたえを感じました」

——体づくりのテーマが明確だったのですね。

「はい。2022年の世界選手権に出場して、明らかに上半身のバルクが足りないと思ったので意識してつけてきました。その上で胸や腕、背中などアウトラインを重視しつつ、脚に対しての上半身のバランス、厚みなども気を付けていました。海外の選手は骨格的に体に厚みがあるので、そこに対抗できるように鍛えてきました」

——近年はドーピング問題が業界内だけでなく一般の中でも話題に上がっています。大谷選手はアンチドーピングについてどのようにお考えですか。

「JBBFなど、アンチドーピングを掲げている団体の大会で使うというのは理解できません。他の大会なら自由ということわけではもちろんないですし、自分でも考えたことはないです」

——大谷選手がナチュラルなボディメイクで、アンチドーピングを掲げるJBBFの大会に出場し続けるのは、フェアな競技へのポリシーや原点となる経験があるのでしょうか。

「もともと、私が小さい頃に一番あこがれたのがオリンピック選手だったんです。スポーツが好きだったので、フェアやアンチドーピングというのは自分の中では当たり前だと思っています。なので、アンチドーピングを徹底しているJBBFが好きですね。理想の体がオリンピアの選手と言っても、あそこまでのサイズ感をナチュラルで出すのは厳しいのは正直わかっています。ただ、大きさと言うよりも全身のバランスなど、そういった面では理想を追求できると思っています」

——国内ではグランド・チャンピオンシップスを3連覇されました。これからはより追われる立場になると思いますが、その点についてはいかがですか。

「いきなり追われる立場になって、正直なところプレッシャーは毎年かなりあります。ただ、自分の理想とする肉体を追求するという面でやることは変わりません。今年はIFBB世界選手権が日本で開催されるということもあるので、日本をアピールするチャンスに少しでも貢献できればと思っています。ボディフィットネスを人気競技にするという目標も含めて、自分の目指すところに向かっていきたいと思います」

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