2023年、国内最高峰のJBBF日本ボディビル選手権で3連覇をはたした相澤隼人選手。優勝後の表情には安堵の色が浮かんでいた。前年は勝利を収めながらも悔しさをにじませていたが、どのような心境の変化があったのか。日本のボディビル界のトップを走る「令和の怪物」に話を聞く。
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ボディビルで食べていこうとは思っていない
――まず2023年を振り返ってください。相澤選手にとってどんな1年でしたか。
「人間的に成長できた1年だったかなと感じています。ボディビル競技一本になりすぎないことと、結果にとらわれなくなったのが大きいですね。もちろん競技なので順位はつきますが、ボディビルの本質的な良さを考えた時に『体を変えていく』ことだと立ち返ることができました。そういうところで人間的に成長できたと思います」
――結果を追求することはプレッシャーにもなり得ることですね。
「そうですね。自分が好きでやっているのに、プレッシャーや使命感が勝ってしまうこともあります。ただ、ボディビルはそれじゃないと思いました。今は根本的にボディビルが好きだと思えますし、視野を広げて考えることができたので人間的に成長できたかなと思います」
――業界全体という点で言うと、2023年を振り返って変化を感じたことはありましたか。
「全体的に業界がオープンになったんじゃないかと思います。ボディビルや筋トレについていろんな形で発信されるようになってきているので、いいことだと思いますね。ただ、発信が増えると受け取る側が情報の質を精査する必要も出てくるので、そういう点は今後の課題かもしれません。難しいところですけど、業界が広がるほど必要になってくることかなと思います」
――昨年10月には第1回ジュラシックカップが開催されました。非常にイベント性が高く、今までとはまた違う大会の形だったかと思います。
「そうですね。アマチュアで賞金つきの大会なんて今までなかったですし、そこでも業界の変化を感じました。イベント性という点では、率直に面白いな、エンタメ性強めだなと思いました。ああいった楽しさがあるとボディビルへの入り口が広がるので大事かなと思います」
――ボディビルで食べていけるという環境は、今までの日本にはなかったかと思います。相澤選手の中で、選手として稼いでいきたいという思いはありますか。
「考え方によると思うのですが、自分はボディビルで食べていきたいとは思っていないです。というのも、自分にとっての理想はトレーニングだけに特化するのではなくて、仕事やトレーニング、競技に家庭といろいろな部分で成長を感じながら生きていくことです。なので、その人生の中にボディビルもあるというのが最高ですね。個人的には賞金というのは、トレーニーにとってご褒美であり、体づくりのモチベーションを高めるものになればいいなと思います」