元TBSカリスマプロデューサーが語る、テレビの今と映像コンテンツの新時代




YouTubeやNetflixが世界を席巻する以前、日本メディアの中心だったテレビ局。その時代にTBSで“スポーツバラエティ”というジャンルを確立させた樋口潮氏は、今なお映像業界で新たなチャレンジを続けている。変化するメディアの形をどう見ているのか。

【写真】樋口氏が全世界に向けてライブ配信したKCC

――最近の映像メディア界について、どのような印象をお持ちですか。

テレビ局の衰退は顕著ですね。本当にテレビの黄金時代を経験できたのは僕より少し上の世代だったと思いますけど、僕も1986年入社なのでその余韻の中で過ごせました。でも2003年に独立した頃には陰りがあったように思います。まだYouTube(2005年~)もNetflix(2007年~)もなかったですけど、スポンサーをつけてCMだけでやっていける時代はいずれ終わるだろうなと感じていました。

――本当ですか。

Facebook(2004年~)が出てきた時、僕は真っ先に飛びついたんです。使い方もよくわからないのに『SASUKE』や『Ninja Warrior』の世界観を載せただけで驚くほどフォロワーが集まりました。これはすごいなと思いましたね。YouTubeはテレビ出身の人たちは当初みんなバカにしていました。僕もそうでしたけど、それはつくっているものがプロとは全然違うよというだけで、それが巨大なマーケットになっていくだろうという予感が僕にはありました。

――プラットフォームとしての脅威は感じていたと。

そうです。僕は独立した後、ミュージカルをやったり、ラスベガスでショーをやったりして世界のすごさも体感していましたから、日本のような島国でどれだけ視聴率を取っても何の評価にもならないことはわかっていました。日本国内のテレビ番組では成功してきましたが、世界のショービジネスに衝撃を受け、エンターテインメントの規模の違いにがく然としました。日本は狭い国ですけどメディアマーケットとしては大きいので、その中だけでもビジネスが成り立ってしまうんですよね。でもYouTubeやSNSが普及してきてボーダレスになってきた時、日本のメディアのチャンピオンだったテレビ局は小さな島国のローカルテレビになってしまうと感じておりました。Amazonプライム(2006年~)やNetflixができた時も、テレビ業界の人は「こんなものが成功するわけない」と言っていましたが、彼らはとっくに海外で成功していて、日本のメディアが気づかないうちにどんどん大きくなっていった。そのうち監督も俳優も世界的メディア側の仕事をするようになっていき、クオリティもどんどん良くなっていった。そうなると世界のマーケットは日本よりはるかに大きいわけですから、日本のテレビ局はかなわなくなる。予想していた通りになってきていますよね。ただ、僕はこの状況をネガティブにとらえているわけではないです。

――と言いますと?

このボーダレスな環境を逆に利用すれば、小さな島国の日本から世界中に発信ができると考えています。今まで海外メディアは日本を見下していましたし、日本が生み出したものを勝手に奪い取り、あたかも自分たちで生み出したかのようにワールドワイドに展開してきました。でも、それはもうできないです。今や実力があれば、日本から世界に一気に仕掛けていくことができるわけですよね。むしろ今まで以上に加速度的に成功することもできるかもしれない。つまりビジネスチャンスが広がったという見方もできるので、僕のように大組織から離れた立場からすると、ワールドワイドに展開できる時代が来た!とも言えます。

――テレビ局の社員のままだったら、そのような考えにならなかったかもしれない。

でしょうね。今でもテレビ局内の人間はどこまで理解しているでしょうか……。まだ自分たちが世の中をリードしていると思っているかもしれません。そうだとしたら、認識のズレがありますよね。もちろんテレビ局の社員はサラリーマンですから、ある程度昇進すれば現場を離れて経営を目指す方もいるでしょうし、それぞれの立場により人生の選択肢があります。僕は性格的にクリエイター気質なので、やはり独立するのが自然の流れだったということだと思います。

◆チャレンジャーとして新時代に参入する