プロレス解説者の柴田惣一さんが取材したプロレスのアレコレを紹介する連載「柴田惣一のよもやま話」。今回は「プロレスラーの意外な元気の源」前編。「最年長レスラー」グレート小鹿の「赤ちゃん……」です。

自身と同年代の人が他界するのは何より堪える。年齢を重ねるにつれ、悲しい知らせは増える。人の死は避けられない定めとは言えツライ。
最年長レスラー「極道鬼」グレート小鹿も、8月4日(日本時間5日)に85歳で亡くなったドリー・ファンク・ジュニアの死に大きな衝撃を受けた。「自分にとって一番、耳に入れたくないニュースだった」と肩を落とした。
ドリーとテリーのファンク兄弟とは相対した「闘友」。「ドリーは口数が少なく何事にもニコッと笑顔。何かと説明するのはテリーだった」と二人を振り返る。
小鹿は長寿の家系に生まれている。最近は闘病もしているが、84歳の今でもファイトし続けている。「小鹿さんは元気だよな」と、何人のベテランレスラーたちから聞いたことだろう。
「レスラーは不死身」が誰よりも似合うのが小鹿だったが、ドリーの死去の報が「最年長男」をも弱気にさせた。「俺はあと何年何日、元気でいられるのか」。散歩をしていても「すれ違う人、みんなも長生きしたいんだろう」と、しんみりしてしまう。
とはいえ、リングにあがり対戦相手を殴り蹴っている。こんな80代はそうはない。力道山が旗揚げした日本プロレスでデビューし今も現役なのは小鹿と藤波辰爾の二人のみ。同世代の人たちよりも元気いっぱいなのは間違いない。
小鹿の健康長寿の秘密と言えば「赤ちゃん用粉ミルク」だろう。現在は大人用の粉ミルクも販売されているが、小鹿は赤ちゃん用にこだわっている。「離乳食直前用のミルク。メーカーも銘柄も決めている」と胸を張る。
タンパク質、DHAアラキドン酸、亜鉛、鉄分、ビフィズス菌、フラクトオリゴ糖……さまざまな栄養分が含まれている赤ちゃん用粉ミルクは、細胞を活性化してくれる。小鹿の細胞にピタリとはまっているようだ。
大人用粉ミルクも試してみたい気がするが、これまで何十年も赤ちゃん用粉ミルクを愛用してきた小鹿にしてみれば「いつかは、チャレンジしたい」ということなのだろう。

赤ちゃん用粉ミルクを堪能しシメは白湯。「白湯も体に良い。朝、起き抜けの白湯は最高だし、いつでも気が付いたら白湯だよ」と定番にしている。毎日3杯の白湯が免疫力を向上させてくれる。
さらに10年ほど前から、オリーブオイルが加わった。「毎日、欠かさない。三日坊主ではだめだよ。続けることが大切なんだ」と力説する。
オリーブオイルの産地、イタリアでは脳や心臓の血管疾患が少ない。動脈硬化を防ぐ上に、アンチエイジング効果もあるのだから、小鹿ならずとも毎日、食したいところ。
体に良いモノを口から取り入れるのはもちろん、無理をしないことも大切だ。「若い人と同じことをしては返ってよくない。自分の今の体力、体調に合ったとトレーニングを適量こなす。いやいやではダメ。楽しみながらやる。体は正直なんだよ」とにっこり。
小鹿本人は意識していないようだが、80代にして負けん気がスゴイのも元気の秘訣だろう。小鹿がかつて所属したジャイアント馬場の全日本プロレスと、アントニオ猪木の新日本プロレスは長年、張り合って来た。お互いのライバル意識は凄まじかった。
しかし、それも区切りがついて時間が経った頃の話。新日本OBで東京・品川区議会議員となった木村健悟が、小鹿が設立した大日本プロレスの会場を表敬訪問したことがある。木村は大日本の初代タッグチャンピオン(パートナーは石川孝志)だ。
小鹿はすでに経営も闘いも最前線から身を引いていたのに、木村の姿を視界にとらえるや、それこそ顔色も目の色も変わってしまった。それまでにこやかに歓談していたのに、至近距離まで詰め寄り「何しに来たんだにぃ!?」と不機嫌そのもの。見る間に闘いの炎が赤々と燃え上がり殺気立った。これには木村も「小鹿さんは変わらないな」と苦笑いするばかりだった。
思えば極道コンビの盟友・大熊元司は1992年に51歳で天国に逝ってしまった。小鹿には大熊や日本のプロレス史を彩って来た同志たちの分まで頑張ってほしい。(敬称略)
