すべての道はマッチョに通ず「理想の肉体はダビデ像です」【コンテスト審査員が解説】




「かっこいいマッチョとは?」というテーマについて、日本ボディビル・フィットネス連盟(JBBF)の辻本俊子専務理事に競技目線から語っていただく本企画。前回までで根幹となる全身のバランスや、その他細かいポイントについて伺いました。ここでふと、「ギリシャのダビデ像しかり、マッチョのかっこよさは太古から共通してるのでは?」という疑問が湧きあがりました。そこで、審査基準の移り変わりという観点もふまえて、辻本理事にお話を伺いました。

マッチョのかっこよさは昔から不変のもの

ギリシャ神話のダビデ像は、たしかにすごいですよね。理想とするマッチョのイメージの一番最初と言えるかもしれません。

フィジークやボディビルの評価基準は、筋肉の大きさ、バランス、重量感、筋肉のカット、ポージングなどが大きなところです。じつはそれは昔から変わりません。

去年、女子フィジークの歴史に関する映像を流す機会があり、その時に昔の写真を掘り起こして男女ともに見ていました。20~30年くらい前の日本チャンピオンの体と、今のチャンピオンの体と、古代と言われるような時代の人の体を並べてみても、古代の人の体はすごいと思います。これだけトレーニング器具やノウハウが発達している現代のマッチョと比べても、全然引けを取らないのではないかと思うくらいすごいのです。

昔は石を持ち上げたり、シンプルなトレーニングしかなかったと思います。そういった中で体をつくるには、腕の力だけでは石が持ち上がらないから、ヒザと腰を落として、スクワットのような形から全身の力を使って持ち上げるなど、そういった動作をしていたのだと思います。

ひとつの動作で腕・脚・背中など複数の部位が鍛えられるというように、連動したトレーニングが自然と行なわれていたのではないでしょうか。こういった体の使い方をしている人は、本当に全身のバランスが整っていますよね。マッチョのかっこよさは、じつは昔から確立されていたのだと思います。

そう考えるとファッションや美の基準は時代によってかなり変化すると思いますが、鍛えた体が放つかっこよさは不変のものがあります。昔の古代ローマの壁画などで重りを持っているような男性をイメージしても、現代が想像するマッチョとそこまで変わらないですよね。

ファッションに力を入れるよりも、筋肉を鍛えることが一番のおしゃれになる部分は大きいのではないでしょうか。そして、それは見せかけなおしゃれではなくて、心が豊かになることで内面的なおしゃれにもなると思います。

お金がある、地位があるとかもいいですけど、歳をとってもかっこいい体でいられるというのはすごく財産だと思います。フィジーク、ボディビルに挑むことは体づくりのモチベーションにもなりますし、そういった動機で競技に挑戦するのもいいと思います。

ぜひ競技者ではないみなさんも、少しのきっかけからトレーニングに興味を持っていただければうれしいです。


辻本俊子(つじもと・としこ)

JBBF(公益社団法人 日本ボディビル・フィットネス連盟)にて専務理事、競技ルール委員会委員⾧、広報委員会委員長を務める。第1回東京クラス別ボディビル選手権46kg級優勝、第5回東京ボディビル選手権大会ミスの部優勝、社会人ボディビル選手権大会マッスルの部優勝、日本クラス別ボディビル選手権大会52kg級優勝、日本ボディビル選手権大会第10回女子の部優勝、ワールドゲームス(オランダハーグ)52kg級7位などの実績を持つ。

取材・文/森本雄大